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保護者とともに

【学童保育】閉所時間を過ぎてもお迎えに来ない保護者に、私たち指導員がとった対応

数年前のことなんですが、新年度が始まり、まだ春休み保育の最中のことでした。

1年生の保護者で、学童の閉所時間を過ぎてもお迎えに来ない方がいました。

所長

もう閉所時間だね

・・・

1年生のかける君は、新年度初日から、朝8時から学童閉所の18時30分まで、みっちり学童で過ごしていました。

慣れない環境で、一日を過ごした緊張もあったでしょう。夕方に一人、また一人とお迎えが来て子どもたちが帰っていく中、最後まで残ったかける君は、とても疲れていて、寂しそうでした。

それだけでなく、かける君には、お母さんがお迎えに遅れていることで、学童に迷惑がかかっていることを敏感に察知しているようなふしがありました。

私は、

支援員

新年度早々、閉所時間を過ぎてもお迎えに来ないなんて

許せん!

という思いを、かける君の手前、ぐっとこらえて、

支援員

もうすぐお母さん来るからね

一緒に待っていよう

・・・うん

と、精一杯優しく、かける君に伝えました。

所長

とは言え、もう18時40分か

ちょっと電話してみるよ

所長がお母さんに電話をかけると、

電話

すいません、職場を出るのが遅くなっちゃって、道も混んでいて、あと20分ほどでつくと思います

とお母さんが言ったそうです。

所長

「・・・わかりました。気をつけて来てくださいね」

所長は、そう答えて電話を切ったそうです。

支援員

職場を出るのが遅くなった?道が混んでる?

閉所時間過ぎるのは許されるっての?

甘えんじゃないわよ!!

という心の叫びを抑えて、私はかける君にいいました。

支援員

お母さん、あと20分ほどかかるみたいだよ

本でも読んで待っていようか

・・・

割り切れない思いがありましたが、子どもや保護者と信頼関係を築く大切な時期です。

かける君が不安にならないように気遣いをしながら、お母さんの到着を一緒に待ちました。

所長

かける君は、僕たちの顔色をうかがっているように感じるね

支援員

ひょっとしたら保育園でも、同じようなことが多かったのかもしれませんね



閉所時間を過ぎるということは

ここから先は、かける君にはもちろん聞かせていない、私たち指導員の「大人の事情」です。

支援員

私だって春休み保育で疲れてる

早く帰ってゆっくりしたいよ

閉所時間を過ぎるということは、指導員の帰宅後の貴重な時間を奪うことになるんだから。

私にだって、私の帰りを待っている家族がいるんだよ。

そのことをわかってくれてるんだろうか。

いや、わかってないから遅れてくるんだわ。

けど、はやく家に帰りたいのは、かける君だって同じだよね。

かける君のお母さんだって早く家に帰りたいと思っているだろう。

そう思うと・・・。

支援員

お母さんだって必死なんだよ

という思いと、

支援員

けしからん!

という思いで、私は、頭の中がグルグルになってしまうのでした。

お迎え遅刻を繰り返す保護者の対応

実は、この前の年にも、お迎え遅刻を繰り返す保護者がいたんです。

ほとんど毎日のように、閉所時間を過ぎてもお迎えに来ないんです。

この時は、本当に対応に悩みました。

支援員

閉所時間を過ぎても、学童で子どもを受け入れているから、見てもらえると思われちゃうのよ

そう思って、学童を閉めて、外で子どもと一緒に保護者のお迎えを待ったりしました。

支援員

お迎えが間に合わないなら、グループ帰宅に変更してください

って、穏やかに相談したら、「まだ1年生なんで留守番が心配で・・・」という返答でした。

支援員

早く帰れるように、私が職場に電話して差し上げましょうか?

だって、学童は18時半には閉まるんですからね~

って言ってみたこともあったんですが、「おほほほ・・・」って笑って、反省の色なしって感じなんです。

そんな状況が長い間続きました。

支援員

「おほほほ」ちゃうわ~!

もう我慢なら~ん!!

これはもう延長料金をとるしかないんじゃないか?

そうしたら、もっと焦って迎えに来てくれるんじゃないんだろうか!?

って所長に進言したんです。すると、

所長

それは、解決にはならないと思うよ

って言うんです。なんで??

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お迎えを遅れたら延長料金を徴収すればよいのでは?

私の学童には、延長料金のシステムがないんですが、延長料金は諸刃の剣だと所長は言うんです。

所長

延長料金の制度を作ったら、今度は、お金を払ったら遅れてもいいと思う保護者が出てくるよ

支援員

いいじゃないですか!

その延長料金を私の残業代に充ててくれたら、私だって残りがいがあるってもんだわ

所長

確かにそうかもしれない、しかしね・・・

学童が18時30分に閉まることが、仕事を退勤する理由になっている保護者もたくさんいるんだよ。

もし学童が21時まで子どもを受け入れたら、仕事を切り上げる理由がなくなり、結果として21時近くまで働かざるを得ない(働かされてしまう)保護者がでてくるかもしれない。

所長

そうなった時、一番困るのは誰だろうか

支援員

こ、子どもです・・・

そうなんです。

子どもを中心に考えると、保護者が仕事を早く終えて家庭でゆっくり過ごすことは、とても大切なことです。

私たちは、子どもにとって、子育てする保護者にとって、より良い社会を作っていかなければならない。

学童の開所時間を遅らせることは、果たして子どもの幸せにつながるんだろうか。

所長

学童の開所時間を遅らせることは、安易にはできないよ・・・

指導員の残業代を出す

延長料金はともかくとして、せめて指導員に残業代を支払ってほしい

私の職場では、会議や行事などは残業代がつくんだけど、お迎えの遅刻の対応は残業の対象にならないんです。

(電車の遅延など、残業代が出るケースもあるけど)

かといって、子どもがいるのに帰るわけにもいかない。

保護者の中には、「学童の外で一人で待たせておいてください」なんて、無茶なことをいう人もいたけど、そんなことできるわけないじゃない。

支援員

これは所長に断固として要求したい!

保護者のお迎え遅刻の対応も残業をつけてくれ~!

所長

そうだよね、検討しないといけないね

けど、残業代をつけることも延長料金と根本的に同じだから

学童の先生は、残業代をもらっているから大丈夫、という保護者の安心感が、やっぱりお迎えを遅刻することにつながるのではなかろうか。

支援員

わらんでもないけど

そんなんぜったいおかしいわ~!!

所長

ごめん、言ってる僕もおかしいと思うよ

善処します・・・



遅れてお迎えに来た保護者に、私たちがとった対応は

そうこうしていると、かける君のお母さんがお迎えにやってきました。

一応私たちは、学童の部屋の明かりは消して、もう学童は閉まっているということがわかるようにして、玄関でかける君のお母さんを出迎えました。

保護者

本当にごめんなさい

かけるもごめんね

支援員

お疲れさまでした

お母さんも大変でしたね

所長

かける君も今日は疲れたと思うから、家ではゆっくりとしてあげてください

保護者

はい、本当にご迷惑おかけしてすいませんでした

支援員

かける君、また明日ね

うん、ばいばい!

結局私たちは、かける君のお母さんがお迎えを遅れたことには触れませんでした

なぜって?

かける君の前で、お母さんに注意するのはやめた方がよいと思ったからよ。

それともう一つ、この日のかける君のお弁当が、すごくおいしそうだったんだ

春休み保育のお弁当作りは、保護者の皆さんにとっては大変なんだ。早起きして、お弁当を作っているかける君のお母さんを想像したら、かける君への思いが、私にも伝わってきたんです。

支援員

だからね・・・

さいごに・・・

とはいえ、明日以降もかける君のお母さんがお迎えを頻繁に遅れてくるようなら・・・、と私たちは相談をしました。

それで、厳しいことをいう時は所長から。指導員の私は、とにかくかける君のお母さんを温かく受け止める、そんな風に役割分担しましょうって二人で打ち合わせしたんです。

支援員

けどさ、残業代はくださいよ

所長

わかったよ

りえ先生も今日はお疲れ様でした!

(おしまい)

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