放課後児童クラブ運営指針では、「子どもが発達段階に応じた主体的な遊びや生活ができるようにすることが求められる」と書かれています。この文の意味を、そして「主体性」という言葉の奥深い意味を考えてみたいと思います。
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目次
運営指針劇場「主体性のしゅうちゃんの巻」
この子は「主体性」のしゅうちゃん。
しゅうちゃんは、いろんなことに興味を持っては、なんでも自分でやりました。
自分でやることが大好きなんだね!
みんなは思いました。ぼくもしゅうちゃんみたいになりたい!
ある日しゅうちゃんは思いました。「みんなもぼくみたいになってほしい!」
そう思った瞬間、しゅうちゃんはきえてしまいました。
しゅうちゃんは、なんでじぶんがきえてしまったのかわかりませんでした。
そこへやってきたのが、発達段階のだんちゃん。
だんちゃんがいっしょにいると、しゅうちゃんはもうきえることはありませんでした。
それからというもの、いつもふたりはいっしょにすごしました。
放課後児童クラブ運営指針を見てごらん。しゅうちゃんのそばにはきっとだんちゃんがいるから・・・。
ご清聴ありがとうございました。
以上で運営指針劇場を終わります。
「主体性」の意味、みんなもわかったか・・・
わかるか~!!
なんやねん、この適当なストーリーは!?
なかなかおもしろかったよ
「主体的に〇〇する」ってどういうこと?
一応聞いておくけど、なんでしゅうちゃん、消えちゃったの?
いや、求めたら消えてしまうのが主体性だと思って・・・
そのはかなさを表現してみたっす!
要するに、「自ら進んで行う」ことが主体性で、誰かに、「主体性を持ちなさい」って言われた時点で、それはもうやらされてるってことだから、「主体性」とは言えないんじゃないかって思ったんっす。
あんた、主体性を馬鹿にしてんじゃないわよ
主体性って言ったら、そんな、求めたら消えるようなちゃちなもんじゃないのよ
てか、何で、そんな主体性のことが気になっちゃったわけ?
実は「放課後児童クラブ運営指針」を読んでて・・・
第2章の「事業の対象となる子どもの発達」の一番最初のところに、こんなふうに書いてあるんです。
放課後児童クラブでは、放課後等に子どもの発達段階に応じた主体的な遊びや生活が可能となるようにすることが求められる。
それで、
主体的な遊びや生活が可能になるって、どういうこと??
って思ってしまって・・・。
さっきも言ったけど、主体的って、「自ら進んで行う」って意味っすよね?それは自分の意思だから、求めちゃったら、もう主体的じゃないと思ったんです。
運営指針を深く読みこもうとする姿勢は素晴らしいけどね・・・
・・・たけし先生、なんか誤解してるんじゃないかしら?
「運営指針」には、「主体的な遊びや生活が可能になるようにすることが求められる」って書いてあるけど、子どもに「主体的になりなさい!」っとか直接言って主体性を求めろって言ってるわけじゃないわよ。
求められているのは、子どもじゃなくって、放課後児童クラブや私達指導員だから。
子どもが主体性を発揮できるように、学童保育の生活づくりや環境、一人ひとりへのかかわりなんかを工夫することが大事なわけよ。
え!?
主体性の意味
「主体的に〇〇する」や「主体性」という言葉には、「自ら進んで行動する」という意味があるけど、それだけじゃないんだ
「主体性」という言葉には、「自分で判断して行動し、その結果に責任を持つ」という意味合いが含まれている。
「主体性」は、社会人になった時に職場でも求められるくらいだから、大切だけどとっても難しいことだよね。
学童の子ども達ができるようになるのも難しいってこと??
だよね。
だから、その前に書かれている「発達段階に応じた・・・」って部分がとっても大切なんだ
たけし先生の「運営指針劇場」の中で、主体性のしゅうちゃんと、発達段階のだんちゃんが仲良くしている部分は、とても鋭いと思ったよ。
やっぱし?
もう一度、運営指針第1章の「放課後児童クラブにおける育成支援の基本」の部分を読んでみよう。
「育成支援」って言ったら、私達が学童で行う子どもへのかかわりのことですね
「放課後児童クラブにおける育成支援は、子どもが安心して過ごせる生活の場としてふさわしい環境を整え、安全面に配慮しながら子どもが自ら危険を回避できるようにしていくとともに、子どもの発達段階に応じた主体的な遊びや生活が可能となるように、自主性、社会性及び創造性の向上、基本的な生活習慣の確立等により、子どもの健全な育成を図ることを目的とする。」(「放課後児童クラブ運営指針」第1章総則~育成支援の基本~より)
1年生と6年生では、主体性を発揮できる活動内容や場面も変わってくるよね
言っちまえばね、発達段階を踏まえない、子ども達が主体的な遊びや生活ができるようになるためのかかわりは、育成支援とは言えないぜ!って運営指針は言ってるのさ。
あら~、
そこまでは言ってないと思うけど・・・
子どもの発達への理解って大切だわ
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「主体的」に似た言葉
「主体的」に似た言葉ってたくさんありますね
運営指針には、他にも、自主性・自発的・自ら律する(自律性)などの言葉も出てきます。
この際だから、似たような言葉の意味を整理してみよう
どれも「自ら進んで行う」姿を表す言葉ではあるんだけど、実はそれぞれに固有の意味があります。
主体性
主体性には、自分で考え判断して行動するだけでなく、その結果においても責任を持つ、という意味合いがあります。
自主性との違いは、やるべきことが決まっていない時でも、自ら目標を持ち判断して行動できるようになることです。
自主性
自主性も、自ら行動するという意味ですが、行動することが「やるべきこと」であるというのがポイントです。例えば、宿題や当番活動など「やらなくてはいけないこと」を、人に言われる前に自ら進んで行えるようになる場合などに使われます。
自発性
自発性は、自ら発すると書くように、自分の中から沸き起こる衝動によって行動するという意味合いがあります。「強い意志」を表している言葉なんですね。
自律性
自律性のポイントは「規範意識」です。つまり、自ら立てたルールに従って行動するという意味合いがあります。自律の対義語は他律であり、こちらは自分以外の誰か(何か)によるルールに従って行動する様となります。
使い分けが難しいですよね・・
「主体性」は「やりたいと思う気持ち」
・・・で、結局、運営指針に書かれている「主体的な遊びや生活が可能となる」ってどんな状態なんすか?
僕は、子ども達が「やりたい」と思う気持ちを持って学童の生活や遊びを楽しめるようになることだと思ってるよ
運営指針の、「子ども達が発達段階に応じた主体的な遊びや生活が可能になるようにすることが求められる」の意味は、平たく言うと、1人ひとりの子どもの、「やりたい」・「やってみたい」という思いを大切にした学童保育の生活や遊びを作っていこう!!ってことなんだ。
そんな「やりたい」思いを、それぞれの子どもの学年や発達の違いを考慮しながら引き出していくこと。
そして、「やりたい」と思う気持ちでスタートした行動から生まれる結果、いわば達成感や反省点なんかを、子どもたちと一緒に感じながら振り返るような活動を丁寧に行っていくことだね。
そのための工夫やかかわりが、子ども達の主体性につながっていくと思うんだ。
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まとめ
運営指針って、一つひとつの言葉に着目すると、とっても奥深いわよね
特に第2章は、さらっと読んだらわかったような気になるけど、立ち止まって考えてみると、色んな見方ができて面白いよ
というわけで、今回は、「主体性」という言葉の意味に着目してみました。
「主体的」や「主体性」という言葉には、やるべきことが決まっていない状態でも、自ら考え、判断して行動し、しかもその結果にも責任を持つ、という意味があります。
学童の子ども達だけでなく、私達大人にとっても難しいことですよね。
様々な学年や発達過程にある子ども達一人ひとりが、「やりたい」「やってみたい」という思いを大切にしながら、学童で過ごせることを、まずは大切にしていきましょう。
「やりたい」「やってみたい」という気持ちを子どもが持てるようになるためには、指導員の我慢強さや、子どもを信じて「待つ」かかわりもとっても大事ですよね。
また、そんな子どもの「やりたい」気持ちから生まれた行動の結果を、子ども達と一緒に共有しながら考えあうような活動を、子どもの発達過程を考慮しながら行っていくことが育成支援なんです。
発達段階を考慮せずにやみくもに子どもに主体性を求めることや、放任や放置をもって主体性とするようなかかわりは育成支援とは言えません。
育成支援って、すごい専門的なかかわりなんです
最後に、何より、学童が安心して過ごせる居場所であってこそ、子ども達は「やりたい思い」をたくさんたくさんふくらますことができるのだと思います。
それではまた次の記事でお会いしましょう♪
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「放課後児童クラブ運営指針」全文
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【参考文献】放課後児童クラブ運営指針解説書/厚生労働省編
【参考URL】社会人の教科書「自発性」「自主性」「主体性」「自律性」「自立性」「積極性」の違い