保護者の皆さん、職員の皆さんこんにちは。がってん学童所長です。
今日のテーマは「保護者会」です。
保護者と職員で、今の時代にふさわしい、より良い保護者会活動について考えていきたいと思います。
保護者会活動が大変だと感じている保護者の方や、問題意識を持っている方など、また、そんな保護者の活動をサポートする立場の職員の皆さんにもぜひ読んでいただきたい内容です。
指導員のりえです。子どもを真ん中に、保護者の皆さんと力を合わせて学童の活動を作っていきたいです。
保護者会長の川奈です。私も一緒に考えたい。よろしくお願いします。
目次
今の保護者って・・・
昔は、「働いていて忙しいから学童に預けているのに、なんで大変な保護者会活動をしなくてはいけないのか」という保護者の声を時々聞くことがありました。
けど最近はこの言葉、聞いた記憶がないんです。
今の保護者って、真面目で熱心な方が多いと思うんです。子どもの放課後の生活への関心や、学童行事への参加意識が高い保護者の方が増えていると感じています。
確かに、協力的な保護者の方、多いですよね。
面と向かって言わないだけで、保護者会活動に負担感を感じている保護者の方もいるんじゃないですか?
そうですね。家族の状況や保護者の就労形態が多様化していますから、色々な考え方があるのはもちろんだと思います。
ところで、働いていて忙しい保護者が嫌がることって何だと思いますか?
?
時間と労力をとられることでしょう?
そうですよね。ただ、先ほども言ったように、今の保護者は協力的な方が結構多いんです。その活動の必要性を理解したら、進んで力を貸してくれる方が大勢います。
私は、保護者が嫌うのは、次のような活動だと思っているんです。
- 意味が感じられない活動
- 時間のわりに中身が薄い活動
- 役割がなくそこにいるだけの状況
- 集まる必要のない会議
特に今の時代、保護者は各職場で、スピード感を持って濃密な業務を日々こなしています。新型コロナウイルスの到来で、社会のオンライン化が進んだからなおさらですね。
確かに、悠長な学童の取り組みにイラっとしたことが正直あります。
必要なことには参加するけど、早く終わらしてとっと帰宅してゆっくりしたい。
今も昔も、それが保護者の本音ですよね。
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「保護者会の興亡」の話
今の時代の保護者会活動を考えるにあたって、聞いてほしい話があります。
実は、今から10年ほど前に、この地域の近隣の学童で、保護者会が次々と亡くなった時期があったんです・・・。
保護者会が隆盛を極めた時代
学童保育は、もともと保護者の「つくり運動」から生まれました。1950年代のことでした。
保護者が働き続けるために、保育園を卒園した後の子どもの預け先が必要だったんです。そんな保護者が集まって、自ら場所を確保したり指導員を雇ったりして、学童保育所を立ち上げていった。
当時の保護者会活動の最大の目的は、我が子を安心して預けられる学童保育の環境や人材配置など、学童保育制度の拡充を行政や自治体に求める「運動」でした。
同時に、安定した運営や指導員確保など、学童保育の維持管理においても保護者は力を合わせて取り組みました。
そのような保護者会活動に支えられて、学童保育は制度・実践内容ともに、発展していきました。
学童保育の制度化
そして、1997年、それまでの保護者の運動がついに結実したんです。
児童福祉法に「放課後児童健全育成事業」として学童保育が位置づけられたんですね。
この「制度化」が、保護者会活動にとっては「分水嶺」となります。それについては後にお話しします。
僕が指導員になったのはちょうどこの頃だった。まだまだ保護者会活動が活発な学童保育所が多く、各地域に強力な保護者会長がいる、群雄割拠の時代だったよ。
制度化以降も、厳しい状況は続きました。学童保育の施設や運営に関する明確な基準がなかったからです。
しかし、2010年代前半になると、「設備運営基準」や「運営指針」が交付されました。
- 2012年 学童保育の対象が小学校6年生までに拡大
- 2014年 「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」公布
- 2015年 「放課後児童クラブ運営指針」公布
様々な課題を引きずりつつ、学童保育の制度は着実に進歩を遂げていったんです。
保護者会活動の衰退
1997年の「制度化」を境にして、学童保育を取り巻く環境は少しずつ整備されていった。
実はその裏で、かつて盛んだった保護者会が次々と滅びていった時期があったんです。
当時私は、地域の保護者会連絡協議会の交流行事を担当していたのですが、年を追うごとに参加団体(保護者会)がみるみる減少していった。
関係者の話では、保護者会活動が縮小されたり、保護者会自体が亡くなってしまった学童保育所が増えているとのことでした。
保護者会滅亡の原因はなんだったんですか?
様々な話をもとにすると、亡くなった保護者会では、内部で次のようなことが起こっていたようです。
- 世代交代を乗り越えられなかった
- 運動が中心の活動に実感の伴わない保護者が増えた
- 保護者のニーズ・価値観の多様化
保護者会活動衰退の原因①「世代交代」
一つ目のポイントは、世代交代です。
「つくり運動」のDNAを引き継ぎ、保護者会を強力に牽引してきた保護者会長の「卒所」をきっかけに、ぷっつりと活動が途切れてしまった保護者会がありました。
強力な主導者のもとで、負担感を感じつつ口に出せないような保護者が一定数存在し、水面下で不満が蓄積されていたんだと思います。
それが、会長の卒所とともに爆発した・・・?
なるほど、風通しの良い組織作りは必要ですね。
保護者会活動衰退の原因②「運動」に実感の伴わない新しい保護者世代
二つ目のポイントは、「運動」が中心の保護者会活動に実感の伴わない保護者が増えたことです。これも世代交代の一環と言えます。
1997年を分水嶺として、それまで学童保育を作り・支えてきた保護者と、後から入所してきた保護者との間で、温度差が深まっていった。
学童保育制度がある程度安定してきた後に、新しく入ってきた保護者にとっては、「運動」の必要性に実感が伴わなかったんです。
実はこれと全く同じ現象が指導員の組合でも起こりました。
うちの支部の組合員も随分減っちゃいましたもんね。
保護者会活動衰退の原因③保護者のニーズや価値感の多様化
最後に、3つ目のポイントとして、保護者のニーズや学童保育に求める価値の多様化です。
2014年の「放課後子ども総合プラン」で政府は「2019年度末までに30万人の放課後児童クラブの受け皿」を整備する目標を示しました。(※現在は「新・放課後子ども総合プラン」)
その結果、各自治体で学童保育の利用児童数が増加し、多様な就労形態の保護者が在籍することになりました。
- 利用児童数の増加
- 非正規雇用の保護者の割合の増加
パートタイマーの保護者の方、増えていますよね
現在のがってん学童の保護者の中には、毎日学童保育が必要でない方や、平日でも16時ごろまでの仕事の方など多様な就労状況の方がいます。
かつては正規雇用でフルタイムの保護者が中心だったと思いますが、今は随分と状況が変わりました。
就労状況の多様化は同時に、学童に求める価値を多様化させています。
そういった状況で、保護者会活動の目的を共有することが難しくなっていったということですな。
3つのポイントを一言でいうと「時代の流れ」です。
一方、存続した保護者会では・・・
ここからが大事です。そんな「時代の荒波」を乗り越え、生き残った保護者会の話です。
どうやって滅亡の危機を乗り越えたんですか??
生き残った保護者会の特徴として、以下のことがあげられます。
- 保護者会活動への職員のサポートと保護者・職員の協働があった
- 保護者にとって手応えある活動を行った
- 持続可能な活動のための改善を行った
職員と保護者が、保護者会活動の意義を共有し、時代に合わせて活動をアップデートした保護者会が存続したんです。
保護者会存続のポイント①職員と保護者の協働
一つ目のポイントは、職員(施設)側の意識の問題です。
職員が保護者会活動の意義を認識しており、保護者会の様々な問題の解決に積極的にかかわり、助言や支援を行った施設は存続しました。
ちょっと意外でしたね。保護者会に職員が介入しているとも感じられますが・・・
たしかに、かかわり方を間違えると、他の問題が生まれます。
ただ、忙しい保護者にとっては、それまでの保護者会活動の経緯を知っていて、頼れる職員の存在はとても大きいんです。
私は、保護者会活動への支援は、学童の高学年の子ども達の活動への支援ととてもよく似ていると思っています。
自治性を大切にしながらも、ほったらかしにしない。職員の適切なサポートが、豊かな自治活動につながるんです。
保護者会存続のポイント②手応えある活動の創出
二つ目のポイントは、時代に合った価値ある活動です。
先ほど、世代交代の荒波が押し寄せ、「運動」の必要性に実感の伴わない新しい保護者が増えたと書きました。
そういった背景の中、保護者会の活動内容を時代に合わせてシフトすることが必要でした。
現在でも学童保育制度の課題はたくさんあります。改善に向けた「運動」は大切です。
ただ、そういった「運動」に実感が伴わない保護者が増えた。
保護者にとって手応えが感じられる活動が必要な状況でした。
それってどんな活動ですか?
後で一緒に考えましょう。
保護者会存続のポイント③持続可能な活動に向けた改善や工夫
最後に、3つ目のポイントは、「持続可能性」です。
当時、保護者会役員は大変で、なかなか担当できる人がいない、という問題がありました。解決策として、経験のある人が数年にわたり担当するという方法がとられた学童がありましたが、結果的に個人の労力に支えられた運営となってしまいました。
存続した保護者会では、負担を減らし、誰でも安心して担当できる活動内容に改善する工夫を重ねました。
保護者会役員の任期が1年というのは、とても大切なことなんです。
役員担当が数年続くというのは負担が大きすぎて、なり手が限られてしまいますな。
ところで、学童の保護者と言えば、各職場で、日々様々な問題解決に取り組んでいる、プロフェッショナルな「仕事人集団」なんです。そういった人たちが知恵を寄せ集めて、その後の担当者が少しでも楽になるような工夫と改善を行った。
具体的には、役員会専用のネットワークやデータベースを構築し、どの時期にどのような準備があるかを明確にしたり、毎年使えるように配布文書のひな型をデータとしてまとめたり、ペーパーレス化をはかったり・・・。
他にも、「時間」と「労力」以外に役員の「金銭負担」が生じるような活動を見直したり。
そういった改善を重ねた保護者会が存続したんですね。
誰もが予想しなかった保護者会の危機
持続可能な保護者会活動が軌道に乗ってきたころに、誰もが予想だにしなかった危機が訪れました。
新型コロナウィルスの襲来ですね。
新型コロナウィルスの登場によって、他の様々な学童行事とともに、保護者会活動や関連する会議などもすべて中止となってしまった・・・。
先代の役員の皆さんは、それまでの知恵と経験の結晶を地中深くに封印しました。
それがこの「引継ぎファイル」です。会長にお渡ししておきますね。
おっもー!!
考えようによってはチャンスともいえるかもしれませんよ。新型コロナウィルス以前の活動の中で、時代に合わなくなっていたものを捨て、本当に子どもや保護者のために必要な活動を、コロナ明けに再開したらよいのではないでしょうか。
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今の時代にふさわしい保護者会活動とは?
今の時代に必要な活動ってなんですか?
さっきも言いましたが、「手応えのある」活動ではないでしょうか。
多様な価値観を持ち、学童に求めることもばらばら、就労形態も様々な保護者の皆さんの共通の願いってなんだろう。
そのことについて、「それまでの活動ありき」ではなく、改めて考えることが第一歩ではないでしょうか。
私は、次の3つのことについて保護者の実感が伴う活動が大切だと思っているんです。
・子どものためになる
・子育てのためになる
・自分(親)自身のためになる
これらは当たり前のようでいて、結構難しいことだと私は感じています。読者の皆さんも自分の学童での活動を思い浮かべてみてください。一つひとつの活動に、そのような実感が伴っていると感じられる方は、素晴らしいです。
「子どものためになる」という手応え
一番は、子どものためになる、子どもの笑顔や成長につながる活動です。
- 子どもの成長につながる活動
- 子どもの笑顔につながる活動
- 学童での子どもの生活がより良くなるための活動
職員と子どもだけではできない。保護者の力があるから実現できる、このような活動がある時、保護者会活動の必要性を実感できるようになります。
「子育てのためになる」という手応え
苦労が多い子育てが、保護者会活動で得られた情報や、そこで生まれた人間関係のおかげで、少しでも楽なものになるといいです。
- 親同士の情報交換
- 親と職員の交流
- 親子の交流
例えば、その活動を通して親同士や親と職員が関係を深めたり、我が子以外の学童の子どもとのかかわりを深められることは、結果的に、子どもを学童に安心して預けることができるようになり、子育ての精神的な負担を軽減することにつながると思っています。
そこは、交流が苦手な親や、交流に必要性を感じない親もいるかもしれませんね。
「親自身のためになる」という手応え
保護者自身が楽しんで参加できる活動であること。これもめっちゃ大事だと思います。
- 親自身が楽しめる活動
- 親の職業的専門性が生かされる活動
- 親の趣味が生かせる活動
保護者って、様々な職種で専門的な技能をもって日々働いているプロフェッショナル集団です。そういった保護者の経験や技術が、学童保育という舞台で、子ども達のために発揮されるような活動は、保護者自信にとってもやりがいのあることだと思います。
子どもたちや学童のためになる活動が、まわりの子どもたちや保護者たち・職員達から感謝されるような活動は、同時に、保護者自身にとっても大きな手応えを感じることができるんです。
子どもや他の親から喜ばれると「やってよかった」と思えますね。
保護者会活動で「親子遊び交流会」をした時には、保護者の皆さんが子どもに返ったように素敵な笑顔を見せていました。
学童保育の活動を通して、子どもに戻ったような時間を過ごすことは、保護者にとっても明日への活力となるのではないかと思います。
負担を軽減することだけを考えないで
これまで保護者の活動を見てきて思うんです。
保護者の皆さんは、苦労が嫌なんじゃない。手応えのない苦労が嫌なんです。
子どものために手応えや実感のある活動には、進んで汗を流してくれるような保護者もたくさんいます。
私はこれまで、夢のあるでっかい取り組みを、力を合わせて達成した時の保護者の皆さんの嬉しそうな姿をたくさん見てきました。大きな苦労は、成し遂げた時の大きな喜びになるんですね。
そんな保護者の様子を見ていると、学生時代の文化祭や部活動を思い出します・・・。
そして、子どもたちは、学童で親たちがつながり生き生きと協働している姿を見るのが大好きです。
そのような雰囲気のもとで、子どもたちは安心して学童で育つことができるんですね。
保護者会が滅亡した学童のその後
質問ですが、保護者会が亡くなっちゃった学童は、その後どうなったんですか?
もちろん、それまでと変わらず運営されていたよ。
ただ、当時私が担当していた、地域の学童の交流行事はとても豊かな体験子どもたちや保護者に保障するものだったから、そういう意味では、子どもの体験の幅は狭まってしまったと言えるかもしれない。
ひょっとしたら、それは、僕が保護者会活動に対して思い入れが強いからそう感じているだけかもしれない。
大事なのは形じゃなくて中身だから、子ども達に豊かな体験や成長の機会を保障するための保護者のつながりや、その活動の在り方については、保護者と職員で考えていきたいと思う。
これからの時代、保護者との協働を考えるうえでは、自由な発想も大切にしたいよ。
さいごに
いかがだったでしょうか。今回は学童保育の保護者会についてみてきました。
「手応え」のある活動が大切ということがよくわかりました。
そんな活動を保護者の皆さんと考えていきたい。
もし、今現在の保護者会活動の中で、そんな手応えや実感が乏しい活動があるなら、より良い活動を目指して検討することも大切だと思います。
必要のない負担については工夫や改善が大切です。
学童の制度が以前より随分整備され、「運動」に実感が伴わない保護者が増えていると書きましたが、現在でも学童保育の課題はたくさんあります。
子ども達や保護者にとって、そこで働く職員にとって、学童保育の制度がより良いものになるように、行政や自治体(場合によっては施設に向けて)に声を上げていかなければいけないこともあります。
そういった問題に目を向け、保護者としての意見を出し合える場として、私は保護者会を大切にしていきたい。
「子どもを真ん中に」、保護者会の在り方や、職員のかかわりについて、保護者の皆さんと一緒に、これからも考えていきたいと思います。
※地域や施設により、保護者会の実態は様々です。本稿は筆者の狭い体験の範囲で書かれています。