子ども同士が取っ組み合いをした時の対応をめぐって、指導員の考えの違いが浮き彫りになりました。ケンカが始まったらすぐに止めるのか、それとも見守るのか?お互いの意見を出し合う中で、ケンカの対応について考えを深めていく職員の姿を書きました。
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目次
皆さんこんにちは
私は、がってん学童で放課後児童支援員をしています。
経験年数は4年目で、職場では「中堅」といったポジションです。
色々と悩むこともありますが、子どもたちや職場の先輩、保護者の皆さんから学びながら毎日顔晴って(がんばって)います。
最近、Twitterを始めましたので、良かったらフォローしてくださいね。
緊急事態、取っ組み合いのケンカが始まった!
ある日のおやつ後のことでした。
てっちゃんとかける君がけんかしてるよ!!
と、3年生のさっちゃんが私を呼びにきてくれたので、すぐに見にいきました。
現着すると、まさに二人がつかみ合いのケンカをしているではありませんか。
私は、とにもかくにも二人をひっぺがして話を聞こうとしたんですけど、その時、そこにたけし先生がいたことに気づいて、目ん玉が飛び出るかと思いました。
あ・・・あなた・・・
いつからここにいたの??
さ、さいしょから・・・
(なんでとめないんだよ~!!)
まわりに子どもたちがいたから声には出さなかったけど、私は心の中で絶叫しました。
(はっ、今はそれどころではないわ。二人のけんかをとめなくっちゃ!!)
私は気を取り直して、てっちゃんとかける君の間に割って入りました。
二人は、とても興奮していて、なかなか落ち着きませんでした。
時間をかけて、なんとか向かい合って座るところまで持っていくことができたのですが、その後も口を開こうとしません。
二人のとっくみあいの原因は?
いったい何があったのよ?
話してごらん。
・・・。
・・・。
これはよほどのことがあったのかもしれない・・・。あっそうだ!最初から事の顛末を見届けていたヤツがいるじゃない。
たけし先生、ずっとそこにいたんでしょ?何があったのか教えてくれる?
・・・。
って、なんで、あなたまで黙り込んでるのよ!最初から見ていたんでしょ?
き、きこえなかった?
何があったか聞いているんだけど。
い、いや、その、なんて説明したらいいものか・・・。
それから彼が話したのは、以下のような内容でした。
- てっちゃんがマンガを読んでいたらかける君がふざけてちょっかいをかけてきた。(こちょこちょするなど)
- てっちゃんは無視をしてとりあわなかった。
- かける君のてっちゃんへのちょっかいは次第にエスカレートしていった。(軽くたたいたりつねったりした)
- てっちゃんは「やめろ!」と口で何度か注意した。
- 見ていたたけし先生もかける君に注意した。
- だけどかける君はちょっかいをやめなかった。
- てっちゃんが怒りだし、言い合いが始まった。
- その中である言葉をかける君が言ったことで、てっちゃんがとびかかった。
あとは私が見た通りとのことです。
なるほど・・・。
それで、そこまでてっちゃんを怒らせたかける君の言葉ってなんだったのよ?
そ、それが・・・
「りえ先生が好きなくせに!」って。
な、な、なんと??
そこまでのやりとりをそばで聞いていたてっちゃんが、突然叫びました。
こんなおばさんすきになるか!!
がーん!
ほんとの本当にね、頭の中で「がーん」って、除夜の鐘のような音が鳴り響いたんです。
おばさんって・・・。
この人たちは、なんなんでしょうね、いったい・・・。
バカバカしくなった私は、たけし先生にその後の対応を任せることにしました。
その後の対応について
翌日の職員打ち合わせで・・・
・・・そんなことがあったのか。
はい。
それで、その後の話はどうなったのよ。
たけし先生が言うには、その後、二人は話し合いをして、お互いの思いを言葉で伝えあったそうです。
かける君が、てっちゃんにちょっかいをかけた理由は、「一緒に遊びたかったから」とのことでした。
二人の気持ちを聞き取った後に、僕からは、だいたいこんな感じで話をして考えてもらいました。
- 一緒に遊びたいのならどのように言えばよかっただろう?(かける)
- 最初に我慢したのはえらかった。言葉で「やめて」と伝えていた。(てつお)
- 手をだしてしまったことはどうだったんだろうか?。(てつお・かける)
- りえ先生に言った言葉はどうだろう?(てつお)
ケンカで手が出たらまずとめる理由は?
二人とも怪我がなくて、本当に良かったわ。
私たちの仕事は、第一に子どもの安全を守ることです。学童のトラブルで怪我になるようなことがないように、私は、いつも注意を払っています。
学童保育の対象となる小学生の子どもの中には、まだ十分に気持ちを言葉で表現することができない子もいます。カッとなって手足が出てしまうこともあるのですが、頭に血が上って力加減ができないような状態で手を出すのはとても危険だと思います。
ケンカで手足が出た時に止めるのは、大切な子どもたちを怪我から守るのと同時に、怪我をさせてしまったという状況から子どもを守ることでもあります。
私は、すぐに止めて、そのうえで、お互いの怒りや悔しさ、本当に言いたかった思いを言葉で伝えあうように子どもたちに話します。
・・・なのに、なぜ?
たけし先生がケンカをすぐに止めなかった理由
なんで、あなたは、すぐにケンカを止めなかったのよ!?
いや、様子を見守っていて、怪我になるようなら割って入ろうと思っていました。
様子を見守るとかじゃなくって、指導員ならすぐにとめなくっちゃならないでしょうが!
え?
「え?」だと??
これまでのたけし先生との付き合いで知っています。彼がこんなあいまいな反応をする時は、腹の中で言いたいことを抱えている時なんです。
なんか言いたいことがあるみたいね。はっきり言ってごらんよ。
じゃ、じゃあ遠慮なく言いますけど、僕は先輩は止めるのが少し早かったんじゃないかと思っています。
なんでそう思うの?理由を聞かせてくれる?
なんでもかんでも指導員がとめてしまったら、子どものためにならないと思うからっす。
たけし先生は、てっちゃんとかける君のやりとりを最初から、一部始終立ち会っていて、かける君のしつこさや引き際の悪さ、てっちゃんが我慢をしたことや堪忍袋の緒が切れた瞬間なども見ていて、あえて取っ組み合いを止めなかったと言いました。
たけし先生はこのようにも言いました。
てっちゃんとかっけーのケンカだったからってのもあります。
二人の普段の関係性が対等だから、今回は見守ることにしたと。
こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど、僕は、小学校低学年の子ども同士のケンカで、そんな大けがになるとは思わない。むしろ、ケンカのルールや力加減を学ばないまま高学年や中学生になることの方が怖いと思っています。
な、なぬ~!!
私は驚きました。職員間でこんなにも認識が違っていたとは・・・。
い、一応聞いておくけど、あなたの言う「ケンカのルール」ってどういうことなのよ?
「噛みつき、引っかき、髪の毛を引っ張るのは卑怯者がやること」とかっすかね。
なんじゃそりゃ~!!
ケンカに関する様々な親の考え
その時、それまで黙って話を聞いていた、所長が口を開きました。
「けんか」についての考え方って色々あるよね。
二人の話を聞いていて、これまで僕が出会った保護者のことを思い出したよ。
保護者?
色んな考え?
以下、所長の話です。
ある保護者から言われたこと①
子ども同士のけんかで、お互いに手を出した一件について、指導員の対応を家庭に報告した時のことだった。
私は、2回は我慢しろ、3回目は我慢せずにやり返せと息子に教えています。
え?
そのお父さんは、我が子が手を出したことについては当然の行為だと言ったんだ。
ある保護者から言われたこと②
また別の保護者は、
・・・ということがありまして、私から〇〇君に「どんな時も手をだしてはいけないよ」と話しておきました。
え?どんな時も?殴られてもやり返してはいけないっていうの?
と、言葉尻をつかんで反論された。
ある保護者から言われたこと③
またある時は、唾をかけられたことが原因のケンカの対応について家庭に連絡したら、翌日お父さんが学童にやってきて、
俺は、息子が殴られたのはかまわないが、唾を吐きかけられたことだけは許せねぇ!!
とすごい剣幕で怒られた。そのお父さんにとっては、唾をかけられるということは、殴られるより何より最大の屈辱だったんだね。
一応言っておくけど、みんないいお父さん・お母さんたちだったんだよ。
ちょっと極端な意見を持ってる保護者だと思われるかもしれないけど、普段は皆さん穏やかで人の好い方たちだったよ。
職員としての考えを明確に
僕は、このような保護者とのやり取りの中で、各家庭の色々な考えや親の様々な意見を知った。
自分の伝え方の悪さを反省することもあったし、そのような保護者の言葉の奥底に我が子に対する愛情を感じることもあった。
だけど、そんなふうに、様々な考えが混在する中で、職員として明確な立場をとることが必要だと思ったんだ。
各家庭の考えは考えとして、学童保育施設で過ごす以上、施設のルールを尊重してもらいたい。それは、先ほどりえ先生が言ったように、
- 子どもの安全を守ること
- 暴力は認めないこと
- 言葉で気持ちを伝えられるように支援すること
ということだった。
小学校の6年間で、子どもたちは言葉や認知が大きく発達する。内面の発達にともなって、子ども同士のケンカは肉体的なぶつかり合いから、次第に言葉の応酬や精神的なせめぎ合いに移行していくと言われている。
学童の子どもたちは、気持ちや感情を言葉で伝えたり、相手の気持ちを理解することを学んでいく時期にあるんだね。
同時に、何事も平和的に解決する文化や、物や人を大切にする雰囲気を学童全体で作っていくことってとても大切なことだと思う。
ところで、さっき話した保護者の皆さんは、叩いたり叩かれたりしたという「結果」よりも、それまでの経緯や、子ども自身が納得しているかどうかに重きを置いている人たちだった。
僕は、そのような人たちとのかかわりからも、ケンカを止めることは大切だけど、そこにいたるまでの子どもの思いや、その後に子ども同士が納得がいくまで話し合うということが、本当に大切なことだと思うようになったんだよ。
ケンカと暴力の違い
ところで、ケンカと暴力の違いは知っているよね。
まぁ、だいたいわ・・・。
これは、僕の中での定義だけど、こんなふうに考えてる。
- ケンカ=同じような立場の者同士の意見と意見のぶつかり合い
- 暴力=強い者が弱い者を力で屈服させること
上級生と下級生など明らかに力の差があるケンカや、1対多数のケンカなどは、「暴力」となる場合がある。
暴力は手を出す出さないに限らず、強い者が一方的に力を行使して相手を屈服させる行為だから、職員が子どもに威圧的な言葉がけをするような行為も暴力となる。重々に気をつけなければならない。
暴力はいけないことだって、みんな思っているよね。
もちろん。
ケンカと暴力の境目は?
さっきも言ったように、手が出なくても暴力となる場合がある。一方で、ケンカの中で手がでてしまうこともある。てっちゃんとかける君のケンカの時みたいに。
ケンカと暴力をどこでわけるかって難しいよね。
正当防衛や、大切な人を助けるために手を出すような場合があるかもしれない。
一方で、大人の世界では、ケンカであっても手を出したら暴行罪、相手に怪我をさせたら傷害罪として検挙されてしまう。
子ども達と長年かかわってきて、どんな説明が子どもにとってわかりやすいかと悩んだりしたけど、やっぱり、ケンカの中であっても、手を出したらそれは暴力なんだというのが今の僕の考えだ。異論があればいつでも話し合いたいと思っているよ。
僕は、たけし先生がその場にいたんだったら止めてほしかったと思う。
や、やっぱし?
「やっぱし」って、たけし先生にも迷いがあったんだね。
そりゃぁ、てっちゃんやかっけーのこと大切に思っていますから。
たけし先生の対応にも説得力があると思ったよ。今後もケンカの対応については、みんなで意見交換をしていこうね。
さいごに・・・
このようにして、てっちゃんとかける君のケンカを通して、私たち指導員の間の考えの違いが浮き彫りになって、けど、そのことについて話し合うこともできました。
冷静になってみると、たけし先生もあの時、けして子どものケンカを放置していたわけではなく、見守っていたのです。
私にとっては、たけし先生や、所長が出会った保護者のように、色々な考えを持つ人がいることを知って、指導員として、ケンカの対応について考えを深める機会となりました。
これは私たちの学童のお話。皆さんの考えも聞かせてもらえると嬉しいです。
ご意見や感想は、サイトのコメント欄やTwitterでお受けしています。
あっ、そうそう。ケンカがあった数日後、こんなことがありましたよ。
夕方、帰り際にてっちゃんが私のところにやってきてね、
・・・りえ先生。
てっちゃん、どうしたの?
・・・ちょっと耳をかして
な~に?
ごにょごにょごにょ・・・
え?
私の頭の中に素敵なチャイムの音色が響きわたりました。
てっちゃんが、この時何を言ったのかは、二人だけのひ・み・つ・💛
(おわり)
今回の記事を書くにあたっては、Twitterのりえ先生アカウントでのケンカの対応に関するフォロワー様のご意見を一部参考にさせていただきました。ご意見をくださった皆様ありがとうございました。