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学童保育の制度・知識

【コロナ禍の学童保育】混乱と不安の中過ごした2020年度<前編>「全国一斉休校~緊急事態宣言」

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はじめに

新型コロナウィルス感染症が現れて、3度目の春を迎えようとしています。

私が勤める学童保育所は、この2年間、感染者数のグラフが描く波形を漂う小舟のように、翻弄され続けてきました。

これまで当たり前だと感じてきたことが、突然に失われ、そして、当たり前でない状態が、当たり前になろうとしている今、「本当にこれで良いのだろうか」と自問自答を繰り返す日々を送っています。

「新型コロナウィルスは、私たちから何を奪い何をもたらしたのか?」

2022年3月現在、オミクロン株が猛威を振るっている最中ではありますが、新型コロナウィルスが到来してからこの間の出来事を、私自身、少しずつ客観的に見ることができるようになってきたと感じています。

私の職場では、この4月から、今年度を大幅に上回る、過去最大の児童数を受け入れることが決まりました。

同じ施設基準で、同じ職員配置で、今年度をさらに超える人数の子どもたちが過ごすことになる。

学童保育を必要とする子どもたちと保護者に、放課後の居場所を保障しなければならないという使命感とともに、この人数を受け入れて、子どもたちの安心と安全を守れるのだろうか、職員に更なる負担と苦労を負わせていいのだろうかという、大きな不安と疑問を感じています。

子どもたちの生活と保護者の就労を支えてきた、2年間の日々の中で、私たちが行ってきたことや感じてきたことを書かなくてはいけない。

それぞれの立場で、それぞれの言葉で、大切にしてきたことや守ろうとしてきたことを語るべき時が来ている。

そのような思いが、私をこの記事に向かわせました。

子どもたちと保護者、そして学童保育指導員や子どもとかかわる仕事に就く人々の苦労が、忘れ去られることなく、子ども・子育てを取り巻くより良い制度や社会に繋がることを切に望んでいます。(がってん学童所長)

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目次

未知のウィルスの到来

「2020年1月に、中国武漢で発生した未知のウィルスが、世界中に拡がっている。」「日本で初めての感染者が出た。」そんなニュースを、遠くの出来事のように感じていたのを憶えています。

所長

この時はまだ、こんな大変な事態になるとは思ってもいませんでした

通勤途中、開店前の薬局に長蛇の列ができていました。また次の薬局にも、列ができていました。職場に到着して同僚に話すと、「マスクを買う人がお店に殺到しているとニュースでやっていた」と教えてくれしました。そのように、我々は、新型コロナウィルスを現実の脅威として次第に認識していくことになったのでした。

突然の「全国一斉休校」

支援員

学校が休校ってことは、学童は朝から開所!?

2月27日に、安倍総理が、全国すべての小中高校と特別支援学校に臨時休校要請の考えを公表しました。

学校はもとより、私たち学童保育の現場も大混乱となりました。

同日に厚労省から発せられた事務連絡「新型コロナウイルス感染症防止のための学校の臨時休業に関連しての保育所等の対応について」には、保育所・学童保育所(放課後児童クラブ)は「学校の一斉休業に対応し、感染予防に留意したうえで、原則として開所するよう依頼」と書かれていました。

明日からどうなるのか?市に問い合わせると、学校が対応を検討しているとのことでした。まず、教育委員会の対応が決まらないと、学童を管轄する市担当課も対応を決めることができなかったのです。明日の対応もわからないまま、時間だけが過ぎていきました。

市から、私の職場にFAXが来た時、20時を過ぎていました。

  • 可能な限り家庭保育の協力を依頼、学童保育は原則開所
  • 授業時間は学校で対応、学童は通常通りの午後から

という内容でした。保護者に連絡をした時には21時を過ぎていました。

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「15時半までは子どもがもたない」校長からの相談

校長

ちと、相談があるんですが・・・

私の職場がある自治体では、保護者の就労等で日中の保育が必要な子どもは、15時30分まで小学校が預かり、その後、学童保育で過ごすことになりました。

休校となった初日に、小学校に子どもの様子を見に行きました。静かな教室で、10名ほどの子どもが、椅子に座り、黙って本を読んでいました。教室に訪れた私を見た子どもたちの顔には、不安と困惑が浮かんでいました。

・・・

所長

1年生が15時半まで、何もせずに過ごすなんて、大変だ

学童に帰ってきたら、ゆっくりさせてやらないと・・・

その2日後に学校長から連絡を受けました。

15時30分までは低学年がもたない。1・2年生だけでも、もう少し早く学童で見てもらえないだろうか」という相談でした。

市からの通知では、15時30分以降の学童保育開所でしたが、校長と協議し、14時30分から、低学年の子どもたちを受け入れることになりました。

今となっては、「たった1時間だけ?もっと早く学童で受け入れられなかったのか」と思うのですが、学童に早く来ることは、感染リスクを高めることを意味していました。当時は、新型コロナウィルスるに関する情報がまだ乏しかったのです。

それに、辛い思いをしているのは、3年生以上の子どもたちも同じでした。低学年を受け入れることで、3年生以上の子どもや保護者からも、15時30以前の受け入れを要望されたら、学童として対応できるのか?校長との意見交換の中、「低学年にとっての通常の終業時間である14時30分までは学校で見る、3年生以上も通常と同じ15時30分まで引き続き学校で見る」という結論となったのです。

たかが1時間、されど1時間でした。少し早く学童に帰ってきた低学年の子どもたちは、心からホッとしているようでした。

授業がない、遊びもない教室で、ただ静かに本を読み過ごす、子どもたちにとってはどれほどの苦痛だったでしょうか。

こういった「特別預かり」の子どもたちに、学校で教師が学習プリントなどをさせることはできないと聞きました。休校している子どもにとって不平等となるためとのことでした。様々な情報や意見が入り乱れ、学校も余程混乱していたのだと思います。

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2日しか出席していないのに1か月の利用料を徴収

私たちや保護者が当惑したのは、市からの通知にあった、「3月中に1日でも学童保育を利用した場合は、家庭内保育であっても、1か月分の利用料金を全額徴収する」という一文でした。

保護者

いくらなんでも、それはひどいわ

所長

徴収するのは学童、気が重い・・・

同じことが、4月の緊急事態宣言下の利用自粛要請の中でも起こりました。この時は、私の学童を運営する法人の判断として、利用自粛の場合、4月分の利用料は徴収しないことを保護者に伝えました。その代わり、緊急事態が明ける5月の利用料は、月途中からの利用であっても1か月分を徴収することとしました。

各家庭にその旨を通知した夕方、ある保護者からメールがあり、一言「英断ですね」と書かれていました。

未曽有の事態の中、自治体の判断だけに任せていてはいけない、現場レベルで自分たちが正しいと思った判断をすることが、時には必要だと思いました。

何が正解かわからない中で、自分の頭で考え、一つひとつの物事を職員で相談して決めなくてはいけない。このことの大切さに、早い段階で気づけたことは、その後の学童運営にとって、非常に大きかったと思います。

もちろん、それは、自分たちの判断に対する責任を自らが負うことも意味していました。自分の判断に自信が持てない時も多くあり、絶えず不安と緊張を感じ続けていました。

感染対策に必要な物品が手に入らない

午後からの学童保育開所にあたっては、私たちが直面した、様々な困難がありました。

まず、消毒液やマスク等の、感染予防に必要な物品が手に入らなかったのです。

支援員

マスクや消毒液が、どこにも売ってません

薬局には売っていない、事務用品や保育用品を扱う業者でも欠品、自治体からの支給もない(休校から2週間ほど経った頃、微々たる量が支給された)、「感染予防に留意する」ことなどできない状況でした。

自宅から、Amazonで消毒液を検索し、何とか「塩化ベンザルニコム液」を購入することができました。相当な高値だったと記憶しています。

所長

アルコールは手に入らないし、これで何とかしなくては

5月の連休明けになって、ようやくアルコール消毒液を購入することができました。500mlが4本。1本の値段は1900円でした。マスクも連休明けになるまで購入できませんでした。1枚65円で100枚。単価は今のマスクの約6倍でした。

どちらも、普段は別の仕事をしているような業者からの購入でした。

支援員

品質は確かなんでしょうか・・・

多くの遊びが感染予防の対象となった

子どもたちや私たち指導員にとっての深刻な問題は、感染拡大に危険とされる要素が、ことごとく、子どもの遊びに必要な要素と共通していたことです。

手をつなぐ、顔を寄せ合う、大声で笑う、抱き合う、タッチをする、同じ道具や遊具を一緒に使うなど、子どもの遊びの中での身体接触や近い距離での交流、ものの共有が、「危険な行為」として、回避すべき対象となりました。

鬼ごっこも

ドッジも

マンカラもだめ?

なんで!?

支援員

子どもたちから遊びを取り上げるのは、む、無理っしょ・・・

しかし、「無理な遊びの制限は、かえって危険となる」と、私の指導員としての経験が警鈴を鳴らしていました。

大人が焦って急激な方向転換をすることは、急カーブで子どもたちを振り落とすことになりかねません。

遊ぶことは、子どもにとって一日の学校生活の疲れを癒すことであり、元気と活力の源です。

急変した社会状況の中で、子どもたちは、毎日大きなストレスを抱えて学童に通ってきました。

そんな子どもたちをまず受け止めることが、何より大切なことでした。

ただいま~!!

支援員

おかえり!

今日は何して遊ぶ?

制限ではなく、置き換え、感染予防をしながらできる遊びを提案し、新たな楽しみを生み出す必要がありました。

今こそ、学童保育指導員の「遊び心」を発揮する時でした。

ドッジやろうよ!

支援員

ボール使った面白い遊びがあるんだ!

一緒にやろうぜ!!


(参考:【学童保育研究22/日本学童保育士協会】「子どもの遊びと育ちを保障する大人の役割とは」/西村美佳:名古屋学芸大学)

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見えないウィルスのために「今を犠牲にする」感染予防は、子どもには理解しがたい

子どもたちと過ごす中で、感染予防のために、やりたいことや好きなことができないという状況は、子どもにとっては理解が難しいことを、私たち指導員が認識することも大切でした。

目に見えないウィルスが相手の感染予防は、「将来の安全を守るために今を犠牲にする」ことでした。特に、見通しが育っていない低学年の発達過程の子どもたちには、理解が難しいのです。

今までできていたのに?なぜいけないのか?子どもたちのそんな疑問や不満を受け止める必要がありました。

やりたいのに、なんでだめなの?

支援員

ほんとだよね~

理解ができないことを押し付けられることは、子どもにとっては大きなストレスです。

とにかく、わかりやすく説明すること、一緒に考えることが大切でした。

しかし、そんな悠長な子どもとのかかわりを許さないほどの社会の圧迫を、私たち指導員はいつも背中に感じていました。

感染予防を促すために子どもの恐怖を煽る働きかけはしない

当時、各国の首長のリーダーシップが話題になりました。

緊急事態宣言下で、若者たちが外出をしている様子を報じた、ある番組の中では、「良きリーダーは、断固たる決断と誠意ある説明、そして国民に対して危機感を持たせることが大事だ。他国に比べて我が国の首相は・・・」とコメンテーターが語っていました。

私も納得をしつつ、子どもに対しては、「危機感を煽る」というかかわりはしてはいけない、と決意を改めました

「手を洗わないとコロナにかかるよ」「コロナにならないようにマスクをしようね」

このような言葉がけは、子どもたちが不安になってしまう。

支援員

あなたのことが大切なの、元気でいてほしいから・・・

所長

本来なら、子どもが無理なく感染予防できるよう、環境を整えることが必要なんですが、学童の限られた施設では大変困難なんです

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消毒作業をどこまでやればよいのか

毎日の消毒作業は、職員の大きな負担となりました。

各部屋のスイッチやドアノブ、電話やパソコンのキーボード、トイレの水洗レバーやコピー機のボタンに至るまで、消毒するべき場所は無数にありました。子どもたちの遊び道具は?、レゴや将棋の駒を一つひとつ消毒するのか?、本は?、漫画は?など、現場の指針となる具体的な情報が不足していました。

支援員

何をどこまで消毒したらいいの~!?

毎日繰り返されるテレビ報道の影響から、保護者も学童保育の衛生面に過敏になっている、そんなプレッシャーを感じました。

遊び道具の消毒や床などの消毒作業を、毎日行う中で、次第に私たちは消耗していきました。

一度落ち着く必要がある、大切なことはなんだ?と考える中で、指導員が疲弊することは、まず避けなければいけないと思いました

そこから話し合い、負担の少ない、持続可能な方法を考えました。

細かい遊び道具や漫画の消毒は難しいため、日替わりで交換しながら、消毒をする方法や、遊びや読書の前後に、子どもたちに手洗いをするように呼びかけることなど、様々な方法を試しました。

7月に消毒液の噴霧器を購入することができ、保育終了後から翌日にかけて、スイッチをONにしておくことで、毎日の床消毒の代わりとすることにしました。

所長

子どもたちを支援する私たちが疲弊しないことが大切・・・

世間の目を恐れて外遊びを控えることはやめよう

休校期間が終わり、春休みが訪れました。新学期が始まるとすぐに、再びの臨時休校となりました。1年生が学校に通えたのは、入学式後の4日間だけで、給食が始まった翌日からは、長期の休校となりました。

保護者

え!?また休校??

緊急事態宣言と同時に「人との接触を最低7割・できれば8割削減を」と外出自粛が要請されました。

当時、出勤前にスマホで見たニュースで、臨時休校中に高校生が公園で遊んでいる姿が報じられていました。コメント欄には非難が集中していました。

私も考えさせられました。

この頃、学童への出席は大幅に減少し、登録児童の2~3割の出席数でした。

そんな子どもたちが、学童の屋外遊技場で毎日遊んでいたのです。

学童のすぐ近所に住む子どもたちで、利用自粛をしている子どももいました。

家から出られない子どもたちが、窓の外に屋外で遊ぶ学童の子どもを見たら、どのような気持ちになるだろうか。その保護者はどう思うだろうか、地域の皆さんはどう思うだろうか、ふとそんなことを思ってしまったのです。

職員で、このことについて話し合いました。

所長

外遊びを控えた方がいいんじゃないだろうか

支援員

外で遊ぶのを我慢している子どもが見たら・・・

支援員

「僕も学童へ行って、みんなと遊びた~い!」ってなっちゃうかも・・・

しかし、様々な思いを出し合う中で、私たちが出した結論は、「まだ批判がこないうちから、様々な行動を自粛することはやめよう」ということでした。一つひとつの子どもの活動には意味があります。

所長

世間の目を気にして、大切なものを子どもから取り上げることはやめよう

この時期に出席していた子どもは、自分が来たいから学童に来ているわけではありませんでした。緊急事態の中でも、保護者が仕事を休めないから学童保育を利用せざるを得なかったのです。保護者は、感染の危険を我が子におかしてまで出勤することに葛藤を感じ、また、子どもたちも、多くの友達が家族で自宅で過ごす中、言葉にできない不安や寂しさをかかえていると思いました。

利用自粛している子どもの気持ちを考えながらも、私たちは、目の前にいる子どもの最善を考える判断をしました。

支援員

迷った時は、「子どもの最善の利益」を考えようよ

所長

もし苦情が来たら、その時に考えたらいいよ

疑問や問題を感じた時には、指導員みんなで考え合う、このスタンスは、その後も大切にしました。

指導員も在宅勤務に

2020年の4月は、過去最多となる、100人を超える登録児童が決まっていました。

そのため、3月から指導員を雇用し、4月には、手厚い勤務体制をとっていました。

緊急事態宣言により、出席児童数が減った中では、多くの指導員が出勤することは、指導員自身の感染リスクを高めるだけとなり、最小限の出勤体制に変更しました。4月はすでに勤務を組んでいたため、在宅ワークという名目で、予定した出勤日の給与を保障することにしました。

アルバイトスタッフの中には、学生や、別に本業を持っているスタッフもいました。そのような、家庭と学童保育所以外の生活場面を持っているスタッフや、電車通勤のスタッフに出勤してもらうことが、学童の感染リスクを高めるのではないかと不安に思うこともありました。

大学のクラスターが報道された時には、学生スタッフの出勤を控えた方が良いのでは、とも思いました。

しかし、その後、新型コロナとのたたかいが長期化する中では、人数が多い職員体制は、職場の安定と職員の安心をもたらしてくれました

経験や資格のないアルバイトスタッフも多いため、13時にはスタッフ全員が出勤し、前日の子どもの様子を振り返り、アルバイトスタッフも毎日実践メモを書いて、打ち合わせで一人ずつ発表するという取り組みを通して、子どもとのかかわりを深めることを大切にしてきました。

利用自粛の子どもたちに向けて遊びの発信を始める

緊急事態宣言による混乱の中で、私たち指導員を助けたのは、保護者会の一斉メールシステムと学童のホームページでした。

一斉メールは、5年ほど前に、保護者会役員となったあるお母さんが、「地震や台風の時に、一斉メールのシステムが便利ですよ」と導入してくれたのです。

コロナ禍で、市からの通知や学童保育のお便り等を、素早く保護者に送ることができました。利用自粛の家庭にも、お便りをメールで配信することができました。

緊急事態宣言が延長され、家で過ごす期間が長引くにつれ、自粛に協力してくれている子どもたちや保護者の、体力面や精神面に及ぼす影響が心配となりました。

保護者

テレワークつっても、家に子どもがいたら仕事にならないな

学校の先生から配られる学習プリントを子どもがするためには、親が付きっ切りにになることもありました。在宅ワークで子どもを見る大変さを感じる保護者も多いと聞きました。

感染予防のため学童の利用は自粛しているけれど、親は仕事を休めず、日中をきょうだいだけで過ごす家庭もありました。昼夜逆転や、ゲーム・スマホ漬け、運動不足による肥満など、家庭で過ごす子どもの様子が心配となりました。

何かできることはないだろうかと指導員で考え、家庭で過ごす子どもたちに向けて、様々な遊びまとめたプリントの配布や、ホームページを活用した動画の配信などを行いました。

プリントの作成や動画の作成が、在宅ワークをする指導員の主な仕事となりました。イラストの得意な学生スタッフや、動画編集が得意な指導員など、それぞれがアイデアを出し合い、特技を発揮しました。

しかし、学童からの発信が、実際に、学童利用を自粛している子どもたちや保護者の助けになっているかどうかは、疑問が残りました。

そこで、一斉送信メールのアンケート機能を使い、在宅で過ごす保護者の悩みや、他の家庭のヒントとなる家族の取り組みや親の息抜きの方法などを集めることにしました。

アンケートで、悩みが深いと感じた家庭には、指導員が電話し困りごとの相談を受けたり、大変ときには頼ってほしいと伝えました。

毎年、母の日には、学童でプレゼント工作を大切に取り組んでいたのですが、今年はどうしようか、という話をしました。

所長

出席も少ないし、難しいよね

支援員

こんな時だからこそ、お母さんたちに温かいメッセージを送りたいんだけど

支援員

工作キットをみんなの家に届けたらどうっすか?

話し合う中で、工作材料と作り方、メッセージカードをまとめた「母の日工作キット」を作り、利用自粛をしている各家庭に配ろうということになりました。

「お母さんには内緒だよ」封筒に書いたそんなメッセージを見た子どもが、わくわくする姿を想像しながら、指導員で準備をしました。

保護者からのマスクの差し入れ

この時期、私たち指導員の励みとなった出来事がいくつかありました。

一つ目は、保護者がマスクを学童に届けてくれたことでした。「先生たちで使ってください」と当時貴重品だったマスクを提供してくれました。保護者の温かい心遣いにどれだけ癒されたことか。

二つ目は、学校長が学童を訪れてくれたことです。校長が見せてくれた「春休み明けの学校教育活動について」という部外秘の資料には、学童に必要な情報が満載でした。その後も校長は、学級閉鎖等の情報をリアルタイムで、直接私の携帯電話に連絡をしてくれました。

校長

お互い、大変ですね・・・学校再開後も、よろしくお願いします

三つ目は、4月から私の学童に復帰した指導員が、感染予防に関する豊富な知識を有していたことでした。

私がまだ指導員だったころの同僚でしたが、学童を辞め、保育園で6年間勤めたのちに、「やっぱり学童で働きたい」と戻ってきてくれたのです。彼にとっては、復帰直後にコロナ禍に見舞われることになったのですが、保育園での経験と専門性を生かして、子どもたちや指導員集団を頼もしく支えてくれました。

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参考文献:「学童保育研究21 緊急特集コロナ禍のなかの学童保育/日本学童保育士協会」「学童保育研究22 特集コロナ禍で問われた指導員の仕事の普遍性/日本学童保育士協会」「日本の学童ほいく 特集新型コロナウィルス感染症ー学童保育の生活づくり/全国学童保育連絡協議会」

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