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子ども支援のポイント

朝寝坊をする息子のゲーム機を隠したら、予想外の反撃が?「宿題がない」と嘘をつく子どもを追い込んだ支援員の私とお母さんがお互いに反省し話し合って考えた対応とは。

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保護者

りえ先生、ちょっと聞いてほしい話があるんだけど・・・

支援員

かける君のお母さん、ちょうど私からもお話があって・・・

ある日のお迎えの時間に、保護者から呼び止められました。いつもは明るいかける君のお母さんですが、この時は思いつめたような表情をしていました。

実は、私からもお伝えしたいことがあったのですが、まずは先に、かける君のお母さんの話を聞かせていただくことにしました。

早起きのルールが守れない息子のゲーム機をとりあげた結果・・・

保護者

実は家で困っていることがあって・・・

お母さんの話によると、最近、かける君が夜遅くまでゲームをしていて、朝起きられないことが増えているそうです。そこで『早起きできないならゲームはダメ』というルールを決めたそうなんですが、最初は3日ぐらい頑張っていたかける君が、4日目に寝坊をしたため、約束通り、お母さんは「ゲーム禁止」を宣告したそうなんです。

保護者

ところがよ、りえ先生

その日、お母さんが仕事から帰ってきたら、先に学童から帰っていたかける君が普通にゲームをしていたそうです。お母さんは『約束違反!』って叱ったそうです。そのうえ、また次の日も寝坊してしまったかける君に頭にきたお母さんは、ゲーム機を隠しちゃったそうです。お母さんが帰ると、家の中のあちこちにかける君がゲームを探し回った痕跡があったそうですが、お母さんは気づかぬふりをして、「自業自得よ・・・」と思っていたそうです。

そんなある日のこと、かける君がまたもや朝寝坊をしたのでお母さんがゲームを隠そうとしたら・・・

保護者

ゲーム機がどこにも見当たらなかったのよ・・・

いつもの置き場所を見てもゲームがない。家のどこを探しても見当たらない。そこでお母さんは思ったそうです。

保護者

どうもかけるがゲーム機を隠したみたいなの。

支援員

お母さんにゲーム機を隠されないように隠したと・・・。

保護者

りえ先生、どう思う?

・・・どう思う?って??

私はかける君のお母さんにどのような言葉をかけたらよいのか一瞬言葉に詰まりました。で、とっさに出てきたのは、こんな言葉でした。

支援員

よかった~

保護者

え?

支援員

私からもお話があるって言ったでしょ?お母さんの話を聞いたら話しやすくなったわ。今度は私の話、聞いてくれますか?

「宿題がない」と嘘をつく子どもを追求し続けた結果・・・

私が、お母さんに相談したかったのは、最近の学童でのかける君の様子でした。

支援員

実は、宿題のことなんですけど・・・

実は昨日、かける君に、「宿題やろう」と声をかけたら、「今日は宿題ない!」って言われたんです。でも、同じクラスの他のこどもは宿題をやっていたし、おかしいと思ってランドセルを見せてもらったら、ちゃんと入っていたんです。

保護者

嘘をついていたんですね?

支援員

ええ。なので私はかける君を叱りました。

『嘘をついたらだめだよ』と、かける君にお話しをしました。お母さんにはお伝えしていなくて申し訳ないのですが、同じようなことが以前にも何度かありました。

それで、今日のことなんですが、また、『今日は宿題ない!』とかける君が言うんです。確かめさせてもらったら、本当にランドセルに宿題は入っていなかったんです。同じクラスの子に聞いたら『宿題出ているよ』って言うし、変だなと思って・・・

支援員

その時気づいたんです。

かける君のズボンの後ろポケットに、折りたたんだ宿題プリントが入っているのを・・・。

保護者

えっ?じゃあやっぱり嘘をついていたんですね・・・。

支援員

はい。「どうして隠したりしたの?」ってきいたんですが、何も言わなくて。

宿題をやるのが嫌なのか、叱られるのが嫌で隠すのか・・・。ちょっと心配になって、お母さんに相談したいと思っていたんです。

二つの事例から考えたこと「かける君への支援とは・・・」

保護者

りえ先生、ごめんなさいね。うちの子が迷惑かけて・・・。

支援員

いえ、そんなんではないんです。私、自分がふがいなくって・・・。

保護者

え?

支援員

私のせいでかける君は嘘をつくしかなかったんじゃないだろうか。私、支援員って名ばかりで、かける君への支援が全然できてないかも、って思ったんです。ほんとごめんなさい。

この気持ちは本当でした。私、かける君の後ろポケットの宿題を見た時、ハッと思ったんです。

かける君が宿題を隠さざるをえないように追い込んでいるのは私じゃないだろうか、って。

私は、かける君が宿題をやりたくない気持ちに共感したり、そもそもなんでそんなに宿題が嫌なのかを想像したり、「だったらどうしたらいいだろう?」って、かける君と一緒に考えたり、そんなかかわりが全然できていなかった。

支援員

私のばっきゃろー!

保護者

り、りえ先生落ち着いて・・・。

具体的な支援について「そのあとお母さんと話し合ったこと」

かける君のお母さんの前で取り乱してしまった私ですが、お母さんはお母さんで、私の話から自分とかける君のかかわりについて客観視できたところもあったようでした。

支援員

かける君、いいところもいっぱいあるんです。それなのに私・・・。

保護者

なんか考えさせられたわ・・・。

そのあと、お母さんと一緒にあれやこれやと話し合ったのは以下のような内容でした。

  • りえ:「宿題を隠す、ゲーム機を隠す、嘘をついてしまうというのは、『怒られたくない』という気持ちが大きいと思う。自分でもまずいことだと思いつつ、叱られるのが嫌で、さらに隠すという悪循環になっているのかもしれない。
  • :叱らなきゃと思ってやってきたけど、正直、効果があるようには思えない。もっと良い方法があれば知りたいと思っている。
  • りえ:学童では、かける君が宿題を取り組みやすいように、最初に声かけする時間を決めたり、終わったらちょっとした遊びを用意したりしてみようと思う。『ちゃんとやろう』という一方的な押しつけではなく、『終わったら○○できるよ』というような、少し前向きな形でアプローチをしてみようと思う。
  • :家でも『早起きできたらゲームしていい』というルールを決めてみたが、いま思うと『できないならダメ』ばかりが強調されてたのかもしれない。もう少し前向きに、『○時までに起きられたらこんないいことがあるよ』みたいにしてみようかな・・・。
支援員

叱る場面が必要なときももちろんあります。でも、『ここはよく頑張ったね』とか、『昨日よりちょっと早く起きられたね』みたいに、できたところに注目する声かけがあると、本人も『やればできるんだ』と感じられるかもしれないですよね。

保護者

最近は怒ることばかりで、かけるのいいところを見つけてあげられてなかったかもしれないと思ったわ。ゲーム機を隠し合うのはお互いにストレスなので、話し合ってルールを一緒に決め直そうと思う。

支援員

そうですよね。隠し合いだと、お母さんも嫌な気持ちになるし、かける君も『また怒られる』『取られる』という不安が増えちゃいますものね。ルール決めがうまくいかないようなら、“ゲームをやるときはリビングでする”とか、“一定時間のみ”といったやり方をされているご家庭もありますよ。

保護者

なるほど。ちょっと考えてみますね。かけるが納得しやすいように、一緒に話し合うのがよさそうですね。

支援員

学童でも、まずは宿題を無理やりやらせるのではなく、かける君が自分から『やろうかな』と思える声かけを工夫してみますね。

保護者

りえ先生ありがとう。私も家で叱るばかりではなくて褒める部分を意識してみるわ。もしまた何かあったらすぐ相談してもいい?

支援員

もちろんです! 何か変化があればこちらからもお伝えしますので、一緒に様子を見ながらやっていきましょう。


ポイントまとめ(放課後児童クラブと家庭との連携)

  1. 「嘘」や「隠す」行動の背景を理解する怒られたくない、面倒・嫌なことを回避したいなど、子どもが追い詰められている気持ちがあるかもしれない。
  2. 叱る場面だけでなく、「褒める」・「認める」場面を意識する小さな達成(少し早く起きられた、宿題を出した)を見つけ、言葉にして伝える。叱るだけでは子どもはモチベーションを失いがちになってしまうことも・・・。
  3. 具体的・前向きなルール設定「できなかったらダメ」だけではなく、「○時までに起きられたらこんないいことがある」など、子どもが納得・イメージしやすい形にする。ゲーム機を隠すのではなく、管理方法や時間のルールを子どもと相談するなど、トラブルを減らす工夫をする。
支援員

かける君のお母さんとゆっくりお話ができてよかったです。

かける君については、学童での様子や宿題の声かけの反応などをこまめにお母さんにに伝えたり、家庭のルールや取り組みの変化も学童側と共有していただくなど、お互いに相談をしながら、それぞれの場所(学童と家庭)でのアプローチを工夫していくことになりました。

今後も家庭と連携しながら、放課後児童クラブでできるかける君への支援について考えていきたいと思います。

※記事内容はフィクションです。

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