【放課後児童クラブ運営指針】令和7年改正のポイントと現場での具体的な取り組み

令和7年の放課後児童クラブ運営指針の改正では、近年のこどもを取り巻く状況の変化を踏まえ、より質の高い育成支援を行うためのポイントが示されています。今回は、改正の主な内容と、現場で求められる具体的な取り組みについて解説します。

令和7年1月に放課後児童クラブ運営指針が改正されました

2015年、「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」に基づき、放課後児童クラブ（学童保育）の具体的な運営内容を示した「放課後児童クラブ運営指針」が公布されました。

その後、こどもを取り巻く社会の変化に応じて、運営指針の改正が重ねられてきました。2019年には、こどもの権利や社会性の育成、安全管理の強化が図られ、2021年には感染症対策が加えられました。

そして2025年（令和7年）1月22日には、「こどもの居場所づくりに関する指針」（令和5年12月閣議決定）の理念を反映し、こどもの権利保障や多様性の尊重をより重視した内容へと改正された運営指針が、こども家庭庁から発出されました。

改正の主なポイント

今回の改正では、以下のような修正・加筆が加えられました。

• 「子ども」⇒「こども」に修正された。
• おやつの時間をコミュニケーションの機会ととらえる記述が加筆された。昼食提供に関する記述が加筆された。
• 職員から子どもへの性暴力やこども間の性暴力防止の対応に関する記述が加筆された。
• ICTを活用した放課後児童クラブと家庭との情報共有について加筆された。
• インクルージョンの観点から、医療的ケアを必要とするこどもの受け入れや、社会的・文化的困難を抱えるこどもへの配慮が加筆された。
• 放課後児童クラブから放課後等デイサービスへの移行支援についての記述が加筆された。
• プール等に入水する活動の留意点が加筆された。
• 自動車を運行して送迎支援を行う場合の留意点が加筆された。

放課後児童クラブの「運営指針２０２５年改正版」一目で改正箇所がわかる！

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改定された部分を黄色のマーカーで示しているので、一目で改正のポイントを把握することができます。ぜひご覧ください。

子どもの権利に関する記述が大幅に充実

令和7年の放課後児童クラブ運営指針改正の最大の特徴は、こどもの意見表明や子どもの権利に関する記述が大幅に充実されたことです。主な改定ポイントは以下のとおりです。

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こどもの権利に関する学習機会やこどもへの説明責任に関して追加された内容

放課後児童クラブの運営主体は、職員に対してこどもの権利に関する学習の機会を設けることが求められています。

• 放課後児童クラブは、自ら進んでこどもの権利について学習を行った上で、育成支援を行う必要がある。（第１章　総則）
• 放課後児童クラブは、こどもの人権に十分配慮するとともに、こども一人ひとりの人格を尊重して育成支援を行い、こどもに影響のある事柄に関してこどもが意見を述べ、参加することを保障する必要がある。特に、こどもの権利に関する学習の機会を保障することに努める。（第１章　総則）
• 放課後児童クラブ及び放課後児童クラブの運営主体は、こどもの権利が侵害される事案が発生した場合の対応方法について定め、あらかじめこどもに周知しておき、事案発生時には適切に対応する必要がある。（第１章　総則）
• こどもの権利に関する理解を深め、放課後児童支援員等に対するこどもの権利に関する学習の機会を設ける。（第４章　放課後児童クラブの運営）

こどもの意見表明や参加の促進に関して追加された内容

こどもが自身の気持ちや意見を表現し、クラブ内のルールや活動内容の決定に参加できるよう、意見を聴取し反映する取り組みが求められています。

• 放課後児童クラブに通うこどもが遊びや生活の中で、自身の権利を理解できるような環境や機会を設けることが求められる。その内容について、保護者に周知するように努めること。（第３章　放課後児童クラブにおける育成支援の内容）
• 放課後児童クラブに通うことについて、その必要性をこどもが理解できるように援助する。その際、こどもの意見も踏まえ、その権利が侵害されないよう、保護者や学校等関係機関と連携して対応する。（第３章　放課後児童クラブにおける育成支援の内容）
• 放課後児童支援員等は、こどもが気持ちや意見を表現できるようにし、それを受けとめる体制を整える。（第３章　放課後児童クラブにおける育成支援の内容）
• こどもが放課後児童クラブでのルール等について意見を表明する機会を持つことや、こどもの生活や遊びに影響を与える事柄については、こどもが放課後児童支援員等と共に考え、共に決めることができるよう努める。（第３章　放課後児童クラブにおける育成支援の内容）
• 放課後児童クラブの運営主体に変更が生じる場合には、こどもの心情に十分配慮した上で、こどもへの丁寧な説明や意見聴取、意見反映が求められる。また、育成支援の継続性が保障され、子どもへの影響が最小限に抑えられるように努めるとともに、保護者への理解が得られるように努める必要がある。（第４章　放課後児童クラブの運営）
• こどもの放課後や居場所を豊かにするという観点から、放課後子供教室の企画内容や準備等について、円滑な協力ができるように打合せを定期的に行い、こどもの目線に立った検討を行う。なお、放課後子供教室への参加に当たっては、体調や帰宅時刻等の理由から参加できない、あるいは自分の意思で参加しないこどもがいることも考慮する。（第５章　学校及び地域との連携）

（以上、「放課後児童クラブ運営指針」より抜粋）

これらの改定により、こどもの権利を尊重し、こどもが主体的に関わることができる放課後児童クラブの運営が一層推進されることが期待されています。​

現場での具体的な取り組み内容

以上のように、令和7年の放課後児童クラブ運営指針改定では、「こどもの権利」の尊重が大きなポイントとなっています。

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① こども会議（意見表明と参加の促進）

目的：こどもが自分たちの意見を言いやすくし、クラブ運営に関わる経験を増やす。

【 具体的な実施方法】

• 月1回「こども会議」を開き、クラブのルールや行事、遊びについて話し合う。
• 話し合うテーマ例：「みんなが楽しく遊ぶために」「新しい遊びを決めよう！」「おやつの希望を考えよう」など。
• 司会や記録係をこどもたちの中から選び、主体的に運営できるようにする。
• 小学1年生～6年生が意見を出せるように、低学年には絵カードを使うなど配慮する。

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② 「権利を考えるワークショップ」（こどもの権利の学習機会）

目的：自分たちの権利を知り、相手の権利も尊重することを学ぶ。

【具体的な実施方法】

• 「こんなときどうする？」というシチュエーションを考え、こどもたちで意見を出し合う。（例：「友達が遊びに入れてくれないとき」「休みたいのに無理に遊びに誘われたとき」）
• 「子どもの権利条約」の簡単な内容を紹介し、日常の生活にどう関係しているか考える。
• 権利を知るだけでなく、「お互いを大事にするってどういうこと？」といった視点も取り入れる。
• 権利が侵害された時の具体的なアクションについて、こどもに説明する。

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③ こども新聞（意見表明の場の拡大）

目的：言葉での表現が苦手なこどもにも、自分の意見を発信できる場をつくる。

【具体的な実施方法】

• クラブ内の出来事や楽しかったこと、提案などを自由に書ける「こども新聞」を作成。
• 絵やシールなど、文章が苦手な子でも参加しやすい工夫をする。
• 発表する場をつくり、他のこどもや職員、保護者などがが意見に耳を傾ける機会を増やす。

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④ 選択できる遊びの場づくり（自己決定権の尊重）

目的：「やらされる」ではなく、自分で選ぶ経験を増やすことで主体性を育てる。

【具体的な実施方法】

• 遊びコーナーをいくつか設定し、こども自身がその日の遊びを選べるようにする。（例：「静かに遊ぶゾーン」「元気に遊ぶゾーン」「じっくり工作ゾーン」など）
• ルールを守った上で、「今日は何をしたいか」を自分で考えて決める時間を設ける。
• 「この遊びを増やしたい！」といった意見を受け付ける仕組みをつくる。

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⑤ ありがとうキャンペーン（相互尊重の促進）

目的：自分の権利を大切にしながら、他者の権利や気持ちも大事にする雰囲気をつくる。

【具体的な実施方法】

• 「ありがとうカード」を作成し、友達や職員に感謝の気持ちを書いて渡せるようにする。
• 帰りの会などの機会で、仲間への感謝を発表する時間を作る。
• 「ありがとう」を伝えてもらったこどもがどんな気持ちになったかも共有し、お互いを尊重する大切さを学ぶ。

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まとめ

令和7年の放課後児童クラブ運営指針の改正では、これまでも放課後児童クラブで大切にされてきた「こどもの権利」が改めて重視されています。これらの改定を踏まえて、現場では、こどもが主体的に考え、意見を表明し、安心して過ごせる環境を作る取り組みをより一層充実させることが求められています。

• 意見を言える場を増やす（子ども会議・新聞など）
• 権利について知る機会をつくる（ワークショップ）
• 自分で選ぶ経験を増やす（遊びの選択）
• 他者の気持ちも大切にする取り組み（ありがとうキャンペーンなど）

今回の記事でご紹介したアイデアがご参考になれば幸いです。

こどもたちが「自分の意見が大切にされている」と感じられる環境を整えることで、放課後児童クラブがより楽しく、安心できる居場所になります。そんな放課後の生活を一緒に作っていきましょう！