ちょっと相談なんですけど・・・
あら、たけし先生・・・
こんどはなんだい?
高学年の女子が膝の上に乗ってくるんですけど、注意してもやめてくれなくって
みなさんこんにちは。がってん学童所長です。
前回、学童でのスキンシップに関する記事を投稿したところ、様々な反響がありました。
その中で、特に目立ったのが、高学年とのスキンシップについての意見でした。
たけし先生は、高学年とスキンシップすることの、なにが問題だと思ってるの?
へ?
今回の記事では、職員と子どもの間でのスキンシップについて、特に「高学年の対応」に焦点をあてて、どのような点に配慮すべきかを考えていきたいと思います。
皆さんに私たちからお願いがあります。
高学年とのスキンシップがいけないという(あるいは別に大丈夫だよと思う)「理由」について、記事を読む前に1分だけ考えてもらえないでしょうか。
そうして自分なりの意見(この問題に関する答えや答えのかけらみたいなもの)を持って後に続くストーリーを読んで欲しいんです。
あなたの意見
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
高学年とのスキンシップは問題なのか?
そ、それは、やっぱ色々と問題があるじゃないですか・・・
色々ってどんなこと?
しょ、所長も言ってたじゃん、前の記事で
学童保育でスキンシップをする時に気を付けたいこと4箇条の中で、「まわりに不安感を与えるようなかかわりはいけない」ってのがありましたよね?
スキンシップは親密なかかわりだけに、その子どもの家族からしたら、家族以外の人間がスキンシップすることに対して不安を感じることもあるかもしれない、
「そのことに留意しておく必要はあるだろう」って所長が言った。
それは、施設職員の子どもへの不適切なかかわりとか犯罪行為とか、とても残念な事例があって、家族や社会の目が厳しいからですよね。
トラブルを防止することとか、親からのクレームを回避することとかもあると思う・・・。
スキンシップが禁止の施設がある??
スキンシップが禁止の施設もあるみたいなんです。
禁止??
はい。
近隣の学童なんだけど、法人として系列の学童保育所では子どもとのスキンシップを禁止しているんだって。僕も最初は「え?そこまで??」って思ったけど、「職員を守るための措置」として、仕方なくしているんだって聞いて、なんだかわからなくなってしまったんです。
たけし先生はそれでいいのか?
へ?
真面目で、いつも子どものために一生懸命、やましいことなんて何一つない、そんなたけし先生みたいな職員がさ、「いやらしい」とか「恥ずかしい」とか「不適切」とかさ、「トラブル回避」とか「危機管理」とかさ、そんなネガティブな思考でしか、高学年とのスキンシップを語れなくて、世間や同僚や保護者の目にビクビクしながら子どもとかかわって、この先何年も働いていく・・・。
本当にそれでいいのか~??
しょ、所長・・・
※注:法人として「子どもを膝に乗せる」等のスキンシップを禁止している施設があると聞き、系列学童で働く知人に詳しく尋ねたところ、明文化はされていないとのことでした。
スキンシップについて、我々がってん学童の立場は
スキンシップについては、様々な意見があると思いますが、我々(がってん学童)としては、前回の記事の中で、以下のことが大切だと提案しました。
- 言語化できること
- 安全が確保されていること
- チームで検討されていること
- 子どもの自立に向けたかかわりであること
ここまではいいだろうか?
はい!
高学年とのスキンシップについては?
そのうえで、高学年の子どもとのスキンシップについての我々の考えなんだけど、
- 高学年をひざに乗せることや高学年とのスキンシップはいけないことだと思っている
ってことでいい?
う~ん?低学年と同じようにべったりってのはあれだけど、ちょっと違うかも?
それってつまりこういうことかな?
- 高学年にスキンシップは不要だと思ってる
ってこと?
基本的には不要だと思うけど・・・
高学年にも必要な時もあるかもしれない。
じゃあ、これならどうだろうか。
- 高学年とは距離を置いたかかわりを大切にしていきたいと思っている
ってのはどう?
一番ぴたっときた!「いけない」とか「不要」じゃなくて「大切」にしたい。
その理由をちゃんと説明できるようになりたいです。
高学年の発達過程って?
「高学年とは、距離を置いたかかわりを大切にしたい」その理由について、まず、高学年の子どもの心と体の成長から切り込んでいきたいと思います。
高学年とのかかわりを考えるうえで大切なポイントだと思う。
「思春期」心と体が大きく成長する時期
僕たちが学童保育でかかわる小学生の子どもたちは6年間の中で大きく成長する。
保育園児と中学生が隣同士で並んだら、それはもう一目瞭然だよね。その間には、小学校の6年間の目覚ましい成長の時期があるんだよ。
1年生といえば、まだまだ幼児性を残していて、大人に依存している子どもたちも多いよね。それが6年生にもなると、大人と同じような体つきの子どももいて、精神的にも大人から随分自立している。
子ども達が大人になる過程の大きな変化の時期に、僕たちは立ち会っているんだ。
その中でも、高学年の心身の変化は急激で劇的なんだ。
もう少し詳しく見てみよう。
小学校高学年頃から迎える「思春期」
子どもたちは、小学校高学年(9歳頃)から中学生時代にかけて急速に成長が加速する、「第二発育急進期」を迎えるんだ。
身長や体重が著しく増加し、大人の体格にぐんぐん近づいてくる。そしてこの頃から、子どもたちは思春期に入ることになる。
女子の方が2年ほど早く第二発育急進期を迎えると言われていますね。
同性であっても個人差が大きいよ。
思春期には、「第二次性徴」が現れ、生殖機能が完成する。
具体的な変化としては、女子は乳房が発達しはじめ、初潮を迎える。男子では精通があり、肩幅や胸幅が広くなったり体毛が濃くなっていったりするんだね。
思春期には、そういった体の成長と並行して、心の成長も進んでいくんだ。
性的な成熟が起こる中で、性に対する興味や関心が強くなり、友達や大人のことを意識するようになるのも、思春期の特徴だ。
そして、急激な体の変化は、子どもの心に不安や混乱をもたらすこともある。心と体のアンバランス状態だね。
思春期には、自分に対して劣等感を持ったり、不機嫌になったり、
大人に対して反抗的になったり、急に甘えたり、不安定な心の状態になる場合があるんですね。
そう。不安定だけに、思春期をどう過ごすかは、その後の子どもの成長にとって、とても大切になるんだよ。
僕たちの仕事は、そのようなダイナミックな成長の時期の中、複雑な心境で過ごす子どもたちを、継続的に支援していくことなんだ。とても重要な役割だよね。
そんな僕たちが、高学年とのスキンシップについてネガティブな思考しか持ち合わせていなくていいんだろうか。
指導員として、子ども達の成長やそれに伴う喜びや悩みにしっかりと寄り添っていく必要があると思わないかい?
恥ずかしいとか不適切とか言ってる場合じゃないっすね。
親でも教師でもない、学童保育指導員の私たちだからできるかかわりってなんだろうか?
高学年の子ども達と、どんな心がまえをもってかかわっていったらいいのだろう?ということについてもう少し深めてみようか。
高学年とのかかわりで大切にしたいこと
下の画像は、高学年とのかかわりや、成長過程にある子どもとのスキンシップを、手のひらを合わせた状態から少しずつ距離を広げていく様子に例えたものなんだ。
子どもの成長に応じて、大人との距離が離れて行って、その間にいくつもの大切なものを育んでいく。
高学年とのかかわりでは、そんなイメージも大切だと思うんだよ。
肌と肌がぴったんこだと、その間に育まれる大切なものが小さくなってしまうかもしれないね。
「大切なもの」って、例えば大好きな遊びとか?
仲間関係とか、失敗や成功、言葉や思いの交流とか色々なことが考えられると思うな。
個人や職場で、上の図のイメージをもとに、子ども達の中に育みたい大切なものについて話し合ってみるのもいいかもしれないね。
「大切なもの」って何だろう?
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
子どもたちが育つ土壌を豊かにしていくということ
もう一つ、たとえ話をしてみよう。
僕たちには、子どもへの直接の支援だけでなく、子ども達が豊かに育っていく環境を整えていくという大切な役割もあるよ。
学童を大きな畑に例えてみよう。
大きな畑に育つ作物たちを子どもに例えてみると、こんな風なことが言えると思う。
1年生は、まだ少し頼りないから、風雨をしのぐために時々添え木が必要になるかもしれない。
けど、2年生・3年生と成長していくにつれてだんだんと添え木が必要ではなくなってくる。
添え木っていうのは、一人ひとりにギュッと寄り添った支援のことですね。
そうだね。そういった支援の手段の一つとして「スキンシップ」があるよね。
添え木を無理にとったり、逆に、自分で育つ力があるのに一方的にこちらが添え木をすることは、どちらも成長にとって良いとは言えないと思う。
それで、ここが大切なところなんだけど、僕たちが添え木のような直接的な支援以外にできることとして、土を耕し、栄養分いっぱいの豊かな土壌を作るってことがあるんだ。
学童保育の遊びや生活を豊かにすることや、6年間の成長に応じた行事や取り組みの設定なんかがそれにあたると思う。
6年間の保育目標
6年間の成長に応じた具体的な活動内容を作成するにあったって、各学年で大切にしたいことをわかりやすくまとめておくことも必要だと思う。
画像は、以前の職場で、僕が6年間の保育目標を端的にまとめたものなんだ。参考までに。
※Twitterでこの画像を投稿したところ、フォロワー様のお一人より、「4年生以上をひとまとめにするのは乱暴ではないか」とご指摘を受けました。鋭い突っ込みだと思いました。
放課後児童クラブ運営指針の第2章には、6年間を3つの発達過程に分けて、それぞれの時期で大切にしたいことがまとめられているよ。
放課後児童クラブ運営指針はこちらの記事で全文を見ることができます。
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「放課後児童クラブ運営指針」全文
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高学年保育については、この記事の中で詳しく書いています。
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【学童保育】高学年保育の課題と取り組みを解説「高学年保育があなたの学童の命運を握る!」(後編)
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大人の社会の「距離感」を教えていくことも大切?
学童保育の実践的な話ではないんだけど、高学年との距離感を考えるうえでは、こんな考え方もあっていいんじゃないかと思うことを話しておくね。
乳幼児と僕たち大人のスキンシップの比較についての話だよ。
乳幼児のスキンシップ
乳幼児にとってスキンシップが大切なのはもちろん知っているよね。
親子のスキンシップはとても大切ですよね。
肌と肌の触れ合いは、愛着の形成にとても重要で、乳幼児の安定的な発達に大きな意味をもっている。情動や社会性の発達の基礎となるんだね。
「愛着」は子どもにとって安全基地であり、他者との基本的な信頼関係の源となるんですよね!
乳幼児は、言語の発達や社会性の発達にともない、子ども同士の遊びやかかわりを豊かにしていく。親や保育者との「愛着」を基盤にしながら、それ以外のかかわりがどんどん拡がっていくんだね。
大人社会のスキンシップ
一方、僕たち大人の社会はどうだろうか?
オトナのスキンシップ?
うん、僕たち大人はさ、職場で同僚に対してスキンシップすることってまずないよね。
例えば、たけし先生を僕が膝に乗せたり、りえ先生が仕事を頑張ってくれたらから、「よく頑張ったね」って言って頭をなでてあげたりすることは考えられないよね。
そんなことしたらぶっ飛ばします。
日本と違う文化の国々では、あいさつ代わりにハグをしたりキスをしたりすることもあるけど、文化の違いを持ちだしたらややこしいので、今は触れないよ。
僕たち大人にとってスキンシップは、限られた人、特に親密な人との間で行われるものなんだ。
愛する人や家族など、特別な人を除いては、簡単にスキンシップをしない。スキンシップは、プライベートでロマンティックなものとして大切な人のためにとっておくものなんだよ。そういった他人との距離がはっきりとしている社会に僕たち大人は生きている。
そして、そんな大人の社会の入り口に、高学年の子ども達は立っているんだ。
大人社会の振る舞いを、少しずつ教えていってあげるのは僕たち大人の役割だよね。
高学年の子ども達に、少しずつ大人社会の距離感を伝えていくことも大切にしたい。
職場倫理として
最後に「職場倫理」について触れておこうと思う。
僕たちの職場にも「職場倫理」があるよね。
「倫理」とは簡単に言うと、道徳やモラルのことなんだけど、子どもの命を預かり、健全な発達を支援する僕たち学童保育所の職員には、高い倫理性が求められる。
多くの職員が子どもに寄り添った一生懸命な支援をする一方で、職場倫理を理解しないごく一部の職員が、虐待などの不適切なかかわりやとても悲しい事件を引き起こしてしまうということが現実に起こっている。
運営指針には、以下のように書かれています。
- 子どもや保護者の人権に十分配慮するとともに、一人ひとりの人格を尊重する。
- 児童虐待等の子どもの心身に有害な影響を与える行為を禁止する。
- 国籍、信条又は社会的な身分による差別的な扱いを禁止する。
- 守秘義務を遵守する。
- 関係法令に基づき個人情報を適切に取り扱い、プライバシーを保護する。
- 保護者に誠実に対応し、信頼関係を構築する。
- 放課後児童支援員等が相互に協力し、研鑽を積みながら、事業内容の向上に努める。
- 事業の社会的責任や公共性を自覚する。
さいごに・・・
というわけで、これまで高学年とのスキンシップについて考えてきたけど、タイトルの「高学年の子どもからスキンシップを求められた時の職員の正しい対応は?」ってことについて言えば、
この問題に正解はないよねよ
え~!?
正解がない問題ということは、一くくりに「良い」「悪い」が判断できないってだけで、逆に言えば無数の正解があるってことなんだ。
スキンシップには、大切な面もあるし、実践として考えた時にはスキンシップに代わるより良い方法がある場合もあるかもしれない。
高学年といっても、学年の区切りがあるにせよ、実際の子どもの姿としては、一人ひとり個人差が大きい。
あくまでも、個々の子どもに寄り添う立場から、場面ごとに判断していかなくちゃいけないってことね。
場面ごとの最適解にたどりつくために精一杯努力しようよ。
ってことで、たけし先生が悩んでいたこと、もっと詳しく聞かせてよ。
はい。実は5年生の女子で・・・
(おまけ)理想の男性職員とは・・
スキンシップの悩みなどを聞いていたら、どうも男性職員に対する負のイメージを感じてしまう。
こういったネガティブなイメージと闘い払拭していくことも、僕たちの使命だと思っている。
私は男性だけなんで?って思いますけど。
いい機会だから、理想の男性職員像について話しておこう。
- さわやかな見出しなみ
- 誠実さが光のように体を包んでいる。
- 1年生から「抱っこして」と頼まれたら、
「一日一回だけだぜ」と答える。
- 高学年からスキンシップを求められたら、
「悪いね。俺は高学年は子ども扱いしたくないんだ」と言って、
自然な素振りで身をかわし、こんな言葉を付け加える。
「珍しいよね。なんかあった?よかったら話聞こうか?」
- 子どもと適度な距離を置くのは、自分の役割は子どもの自立を支援することだと考えているから。
- 社会の目を気にするのは、子どもや保護者・地域の人々から信頼される職員を目指しているから。
- いざ必要性を感じたら、人目なんか気にしない。それこそ全身でその子のことを受け止める。
- 異性のことも同性のことも、幼児も低学年も高学年も高齢者も、等しく尊重する。
- 動物だって草木だって、命あるものを尊重する。
- スキンシップ以外に子どもの心を温める方法を300個以上持ってる。
300個??
- 顔はキムタク
キ、キムタク??
よかったなぁ!たけし先生
な、なにが?
そんな先輩が身近にいて!
・・・
最後まで読んでいただきありがとうございました。
最初に読者の皆さんに考えてもらった、高学年のスキンシップについてのご意見と比べて、記事の内容はどうでしたか?
この記事以外にも、たくさんの答えがあるはず。この問題に対するあなたなりの答えが、ネガティブではなく「素敵なもの」でありますように。
(おしまい)
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